ご存知のように有名なハンガリー舞曲集はブラームスの「作曲」でなく「編曲」という事になっている。
じゃあ、原曲を聴きたくなるというものだ。
ネットで調べてみる。今回5番を演奏するのでそれから。
まずWikipediaでは第5番の原曲はケーレル・ベーラのチャルダッシュ“Bártfai emlék”による、とある。
またNHKによると(らららクラシックで取り上げたらしい)、
[有名な「第5番」の場合、Aメロ=ケーレル作のピアノ曲、Bメロ=ボーグナー作の歌曲]とある。
「Bártfai emlék」を調べたらIMSLPで出てきましたね。
たぶん著作権的にはここに貼りつけても問題ないと思う。
「Bártfai emlék」という題名だがドイツ語では「Erinnerung an Bartfeld」、英語では「Memories of Bártfa」
日本語では「バルデヨフの思い出」。
「Bártfa」は作曲者の出身地の地名で現在はスロバキア領内。(当時はハプスブルク家領地のハンガリー地域)、かなり由緒のある温泉地らしい。現在の地名ではBardejovとのこと(グーグルマップによる)。ドイツ語、ハンガリー語、スロバキア語で全然違うのは東欧の地名でよくある話。
作曲者Béla Kéler の苗字名前の順番が文献によって異なるのはハンガリー人だからで、Kélerのほうが苗字なのだろう。(1820~1882年)
で、このチャルダッシュの第1フリスが該当部分。
該当部分は1:15くらいから。
もともとチャルダッシュのフリスなので割と快速でずんずん演奏するのが本来のイメージなのだと思う。
オーケストラ版もYouTubeにあったがどういう素性かわからないのでここには貼りつけませんでした。
興味がある人は自分で検索して下さい。
で、ここまで調べたのだが、ひょっとしたらケレル作曲/ブラームス編曲という単純な図式ではなく、同じ伝承曲をお互い別々に編曲した可能性もあると思う。
今回はそこまでは調べきれなかった。
次、中間部
曲名は “Uccu bizony megérett a kaka” (池に茂るは)
NHKによるとボーグナー作曲の歌曲ということだが、実際にはハンガリーの伝承曲で、歌曲に編曲したのがボーグナーさんらしい。
Ignac Bognar さん。読み方はボニャルと書いてたりボグナールと書いてたりする。よくわからん。
ハンガリーの歌手で歌劇場の監督とかコーラスマスターをしてた歌の人。歌劇の作曲もした。1810~1883
YouTubeには下の2種類だけ見つかった。聴いてみよう。
まあ、聴いての通り。
楽譜上は “poco rit.” なのに、皆が “molto meno mosso” に演奏する不思議な部分(実は自分も今回はそうするのだが…)も、こんな感じ。これは現代の演奏者によるCDなので、ブラームスの曲の伝統的な演奏に引きずられたのかもしれないし…。わからん!
この曲も Bognar さんと並行してというか別々に、ブラームスが伝統曲を編曲したのかもしれないと思う。
なにせブラームスがレメーニと組んでハンガリー/ジプシー音楽のネタを仕入れたのはかなり若いころ(1853頃、ブラームス20歳!)というのもあるし…
今回はここまでしか調べられなかったが、詳しく時系列含め緻密に文献を調べた音楽学者さんなどどこかにいそうなものだ。
これ以上の情報があったらどなたか教えてください。