ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番と「傑作の森」

 先日、縁あってベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番をソリストと合わせる、なんて機会があった。(練習だけなんだけど)

 で、この曲を勉強していると、どこかで見たようなフレーズ、(というよりはモチーフというか音楽の部品)が色々あることに気が付く。

 例えば、冒頭の第1主題

これが、第5交響曲の第4楽章と似ているとはよく言われることだが

 よく見ると後半部分は、第4交響曲の第2楽章のモチーフそのものである。

 また、第1楽章の281小節目のピアノの3連符の動きが

 エロイカの終楽章398小節目

と同じだと思うのも私だけではないだろう。

 

微妙に音程関係は違うけど、第1楽章の第2主題

 これは、第8交響曲の冒頭にかなり似ている。

 

 さらに、次の音型(第1楽章の429小節目)は

明らかに第5交響曲のモチーフだろう。

 

 ちなみに、最初のピアノ登場場面

これは、第9の第1楽章の最後にある音型だよね。


これらの例は、短く切り出しているので、そういうアプローチなら何とでも結び付けられるだろうというツッコミも聞こえてきそうだが、私はこう思う。

 

 この協奏曲は1897年に書き始められ、1800年頃には一応形になっていたらしい(初演は1803年)。この頃ベートーベンは演奏家としてはかなりメジャーになっていて、作曲の方をバリバリ飛ばし始めた時期に当たる。なのでピアノに向かってでも五線紙に向かってでも色々と楽想をひらめかせて自分の引き出しに貯めていったのではないだろうか。まだ難聴もそれほどでもなかった時期でもあるし。

 

 なので、例えば429小節目のモチーフを頭の中でいじっているうちに「これで交響曲を作ったらどうなるだろう、よし、チャレンジしてみよう」とか考えたのではないだろうか。(実際第5交響曲の構想を始めたのもこの時期)

 ベートーベンの偉いのは「ああ、使いまわしているな」なんてことは感じさせず。それぞれの曲で練りに練った音楽を作る、または効果的に活用していることだと思う。

  

 ところで、この曲はモーツァルトのハ短調協奏曲24番491(ベートーベンはこの曲の信奉者だった)を意識して書かれたらしい。モーツァルトと比べてしまうとベートーベンのほうが、凡人が頑張りましたに感じてしまうが、比べる相手が凄すぎるだけ。

 

 蛇足だがハ短調の曲の緩徐楽章に、物凄く遠い調であるホ長調、を持ってくるというのは当時としては画期的なことだと思うのだが、後世その調関係をパクった作品がある(超有名曲です)。さて誰の何でしょう。